予習と復習は、今も昔も学習の基礎基本として知られています。私はオンライン家庭教師として、毎日全国の子どもたちに授業を行っていますが、例に漏れず「予習と復習の重要性」を口にしていますが、なかなか理解されにくいのも事実です。
なぜ、予習と復習の重要性が理解されないのかについては、「即効性がないから」だと思っています。コツコツやることで、数週間後の定期テスト、ひいては数ヶ月後、数年後の受験で結果が出るのですが、そこまで見通せる子どもはなかなか多くありません。
そこでこの記事では、「予習と復習」というテーマについて深掘りしていきます。現役のオンライン家庭教師がわかりやすく解説していくので、参考にしてみてください。
現役のオンライン家庭教師として毎日、世界中の子どもたちに勉強を教えています。現役講師だからこそ伝えられる、正確な情報をわかりやすくお伝えします!
なぜ、予習と復習が成績アップに必要なのか
まずは予習と復習が成績アップに必要な理由から解説していきますが、読者の方が子どもであろうと、大人であろうと、「予習と復習は大事!」ということは理解していると思います。
しかし、「なぜ大事なのか」については、学校でほとんど説明されないのも事実です。
「記憶と忘却」がキーワードに
結論から言えば、予習と復習の重要性を理解するには、「記憶と忘却」がキーワードになります。つまり、「覚えることと忘れること」に予習と復習が大きく関わっているということです。
では、具体的にどの程度、予習と復習を行うことで「忘れにくく」なるのでしょうか?
記憶に関する有名な研究「エビングハウスの忘却曲線」
ここで取り上げたいのが、記憶に関する有名な研究である「エビングハウスの忘却曲線」です。
この研究では、「復習のタイミング」が記憶に与える影響を評価しており、意味を持たないアルファベットの羅列(mriなど)を「覚え切って」からそれを復習し、「再度覚え切るまで」にどの程度の努力(時間)が必要になるのかを明らかにしました。
その結果を示したグラフと表を以下に掲載します。
忘却曲線のデータ | |
---|---|
初回記憶 |
節約率:なし 復習にかかる時間:なし |
20分後 |
節約率:58% 復習にかかる時間:42% |
1時間後 |
節約率:44% 復習にかかる時間:56% |
9時間後 |
節約率:35% 復習にかかる時間:65% |
1日後 |
節約率:34% 復習にかかる時間:66% |
2日後 |
節約率:27% 復習にかかる時間:73% |
6日後 |
節約率:25% 復習にかかる時間:75% |
1カ月後 |
節約率:21% 復習にかかる時間:79% |
まずグラフについてですが、上記グラフは縦軸に「最初に覚えるのにかかった時間からどの程度の時間を節約できたのか」を示す節約率を、横軸に時間を、それぞれ取っています。
その結果、右肩下がりにくだっていく曲線が描けました。エクセルで簡単に書いただけなので、粗い部分については許してください。
一方で、データをまとめた表を見るとよりわかりやすいです。意味を持たないアルファベットを記憶して、その20分後に復習をした場合は、節約率は58%、つまり復習にかかる時間が58%節約できたということなので、42%の時間で初回記憶と同等の水準まで復習できることを示しています。
そして、1時間後になると節約率は44%となり、50%を下回ります。逆に言えば、初回の56%の時間をかけなければいけないということなので、1時間経っただけで半分以上の時間が復習に必要になることを示しています。
その後、節約率は緩やかにですが確実に下降していき、6日後には節約率は25%、つまり初回の「75%」の時間が復習に必要になるのだから驚きです。これでは「学び直し」とほとんど同じですよね。
勉強をしたくないなら予習と復習をすべき
以上のエビンングハウスの忘却曲線の研究からわかることは、「早く復習すればするほど短い時間で復習できる」ことです。
一見すると当たり前のことですが、研究データを使って示されるとより説得力が増しますよね。
したがって、「勉強なんてしたくない」「勉強をする時間は最低限が良い」と考えるなら、節約率が高いうちに早い段階で「予習と復習」をすべきなのです。
最短の勉強時間で結果につながる
もし、学校の授業の進度に合わせて予習をしたら、予習で学んだことを「学校の授業で復習」できます。つまり、予習をすることで、学校の授業は「予習の復習」となるのです。
そして、学校の授業が終わったら、次は学校の授業の復習をしていきます。この復習は「予習の復習の復習」をすることになり、2段階の復習の体制が整うのです。
これを数時間〜数日という単位で繰り返していけば、節約率が高い状態のまま、つまり「復習にかける時間が短い状態のまま」勉強を進められます。
これは「最短の勉強時間で結果につながる」学習方法に他なりません。ゆえに、予習と復習が成績アップに欠かせないのです。
- 早く復習すればするほど少ない勉強量で済む
- 1週間後に復習をしても初回の75%の時間がかかる
- 最短の勉強時間で済ますなら予習と復習で「2段階の復習体制」を整える
結果につながる「予習」方法と最適な教材を現役講師が解説
まずは予習と復習の重要性についてお話ししましたが、ここからは「結果につながる」をテーマとして、予習と復習の方法を解説していきます。はじめは予習の方法と最適な教材からです。
結果につながる予習に最適な教材
予習方法を説明する上で予習向けの教材が必要になるので、予習に最適な教材から解説していきます。
まず覚えておいて欲しいのは、学校配布の教科書やワークなどは「予習に向いていない」点です。
なぜなら、学校配布教材は学校の授業を受けること、受けたことを前提に作られているから。予習用に作られていないので、よほど学力が高いか、モチベーションが高くないと三日坊主にすらなりません。
したがって、必ず「予習向け教材」を使うようにしてください。
といっても、高額なよくわからないような教材を使う必要は一切ありません。普通に全国の書店に売ってる、1冊1,000円程度のものを使えばそれでOK。特別なものは一切不要です。
「ひとつひとつわかりやすく。」シリーズが現役講師おすすめ
筆者は現役のオンライン家庭教師として毎日、世界中の子どもたちに授業をしていますが、「学校の授業の予習をして欲しい」という要望は非常に多いです。
そんな時に「生徒のレベルに関係なく必ず使っている」のが、学研さんが出している「ひとつひとつわかりやすく。」シリーズです。
こちらのシリーズは、「勉強が苦手な子、嫌いな子」に特化した教材で、現役講師が本気で評価しても「素晴らしい」という言葉が出てきてしまうほど、完成度の高い1冊に仕上がっています。
以下に公式サイトから引用した「中1数学をひとつひとつわかりやすく。」の中身の画像を掲載します。
ご覧になってわかるように、左側に解説が、右側に問題が、それぞれ配置されていて、また「カラフル」「文字が大きい」といった感想も抱くと思います。
また、左側の解説は「穴埋め形式」となっており、イラストが多め。そして、右側の問題ページは「問題数が少なく簡単」なので、1単元10分程度で終わります。
このように、勉強が苦手でも嫌いでも、無理なく取り組めるように工夫されています。
予習に使った結果、例外なく「全員成績が上がった」
そして、これだけ取り組みやすいように作られているので、「予習に使えないか」と実際の授業で試してみたところ、これが本当にハマりました。
これを予習に使うように指示し、コツコツと学習のサポートをしていただけで、平均点マイナス10点〜30点」程度の子たちが、平均点を難なく取ることに成功。講師として本当に嬉しかったです。
とまあ、こんな感じで筆者はかなりこの教材に入れ込んでいるのですが、教育業界の中でもこの教材への評価は非常に高いので、大きく間違ったことは言っていないと思います。
なお、この教材は以下のラインナップで販売されています。
「ひとつひとつ」のラインナップ | |
---|---|
小学生 | 小5、小6で5教科全て用意 |
中学生 |
【国語】 中学国語(国語全般) 中学国語の基礎知識 【数学】 1年生 2年生 3年生 中学数学の解き方 【英語】 1年生 2年生 3年生 中学英単語 【理科】 1年生 2年生 3年生 中学理科用語 【社会】 1年生 2年生 3年生 中学社会用語 |
高校生 |
【国語】 現代文 古文漢文 【数学】 数学Ⅰ 数学Iの解き方 数学A 数学Aの解き方 数学Ⅱ 数学Ⅱの解き方 数学B 数学Bの解き方 【英語】 英文法 英文読解 リスニング 【理科】 化学基礎 化学基礎の解き方 生物基礎 生物基礎の解き方 物理基礎 物理基礎の解き方 【社会】 歴史総合 地理総合 |
小学生から高校生まで、主要科目でしっかり用意されているので、学年、科目に関わらず使えるのは非常に嬉しいです。
結果につながる予習方法
「結果につながる予習方法」と聞くと、何か特別なことや戦略、スキルが必要なんじゃないかと思ってしまいますよね。
しかし、全くそんなことはありません。やるべきことは非常にシンプルで、「予習向け教材を使って1教科につき10分〜20分程度」毎日コツコツやるだけです。
例として、「ひとつひとつわかりやすく。」の以下のページを取り上げてみます。
こちらは中学1年生の一番最初の単元「0より大きい数・小さい数」ですが、正負の数の導入部分ですね。「マイナス」という概念を中学生になって初めて学ぶ単元で、見開き2ページを10分程度やるだけでそれで終わり。簡単です。
学校の進度に合わせて進めていく形になるので、毎日1科目やる必要もないでしょう。進度の確認だけサポートが必要かもしれませんが、それ以外は基本子ども1人で完結できます。
最初から完璧を目指さない。少しずつ負荷を上げていこう
このように、予習方法については非常に簡単、かつシンプルですが、これを実際にやるのは辛抱強さが必要です。
大人たちから見れば、「1科目につきたった2ページ進めるだけ」ですが、子どもたちにとっては「学校で習っていない部分を1人で学ぶ」のですから、難易度は言うほど低くありません。
したがって、最初から完璧を目指すのはやめてあげましょう。少しずつ、少しずつ負荷を上げていって、数カ月単位で成長していくのが理想です。
最初は得意科目に絞るなど、工夫をしてあげて、コツコツと続けていく姿勢を身につけさせてあげましょう。
結果につながる「復習」方法と最適な教材を現役講師が解説
続いて、結果につながる復習方法と最適な教材を解説していきます。
予習とはガラリと変わってくるので、教材、方法の順番でチェックしていきましょう。
結果につながる復習に最適な教材
まずは復習の教材についてですが、何か特別な、素晴らしい教材があると思っている方もいるかもしれません。
しかし、残念ながらスペシャルな教材があるわけでも、知る人ぞ知るようなテキストがあるわけでもなく、ただただ学校から配布される問題集である「学校ワーク」をおすすめしています。
学校ワークを復習におすすめしている理由は下記の通り。
学校ワークが復習に最適な理由 | |
---|---|
基礎固めに最適 |
・基礎から応用まで幅広く ・問題数も豊富 |
成績に直結する |
・定期テストにそのまま出ることも ・学校ワーク提出で通知表にも影響が |
コスパが良い |
・学校から配布されるので実質無料 ・市販の教材よりも使いやすく優秀 |
あまり知られていませんが、学校ワークは市販の問題集と比べてもかなり優秀で、非常に使いやすいです。
学校の教科書と完全に対応しているので、「授業で習ったことがそのまま問題に反映される」ため、復習に最適なんですね。また、問題数も十分量用意されているのもGood。
加えて、学校の先生はテストを作るのが大変なので、学校ワークから問題を移植していることが多いです。提出も考慮すると、「成績に直結する」ためやらない手はありません。
そして何より、学校から配布されているので実質無料。これが大きいですね。各科目で配布されることが多いので、しっかり手をつけて復習を行いましょう。
勉強が苦手なら学校ワークは合わない可能性も
ただし、勉強が苦手な場合、具体的には「平均点以下」を毎回テストで取ってくるような場合は、学校ワークは少し合わないかもしれません。
なぜなら、学校ワークは「学校の授業がわかる前提で構成されている」から。「わかることを定着させる」ために作られているため、「わからないことをわかるようにする」ためには作られていません。
だからこそ、学校ワークには解説のページがなく、問題しか載っていないのです。
したがって、学校の授業についていけていない場合は、学校ワークを独学で取り組ませるのではなく、以下の選択肢を検討しましょう。
- 家庭教師に学校ワークを一緒に進めてもらう
- 動画授業で理解度を高めて学校ワークに挑戦する
- 復習ではなくまずは予習に力を入れる
筆者が家庭教師ということもありますが、個人的におすすめなのは「家庭教師に学校ワークを一緒に進めてもらう」方法です。
ここで大切なのは「塾ではなく家庭教師」だということ。塾の場合、学校ワーク以外の教材を購入させられ、学校ワークを授業で扱ってもらうことは原則できないからです。
しかし、定期テストの対策の基本は学校ワークであり、提出の有無が通知表に関わります。つまり、学校ワークで復習を行うのが「最も効率的」なのです。他の教材を復習目的で使う理由は基本的にありません。
一方で、家庭教師は少しハードルが高いのも事実なので、そういった場合は「スタディサプリ」など動画授業を活用して、動画授業で理解度を高めながら学校ワークに挑戦してみましょう。
結果につながる復習方法
兎にも角にも「学校ワーク」が復習に最適であることを理解していただきましたが、復習方法についても非常にシンプルです。
「学校で学んだ範囲の学校ワークを進めていく」
ことで、とても簡単に結果につなげることができます。
テストまでに学校ワークを「周回」することが大切
普段から復習に学校ワークを使用していると、テスト前には大部分のページがやり終わっている状態になります。
ここから、どれだけ「周回」できるのかが重要で、最低2周、理想は3周〜5周することで、平均点+10点以上が見えてくるでしょう。
この「学校ワークの周回」さえできれば、誰でも簡単に結果を残すことができるのですが、一方で学校ワークの周回は、スマホゲームの周回のようなスキップチケットはありません。地味で退屈な、反復作業です。
しかし、逆に言えば、この地味で退屈な反復作業さえできてしまえば、簡単に結果を残すことができるのです。
もし、学校ワークの周回作業が思うようにできないなら、予習と同様に家庭教師を利用すると良いでしょう。サポートをしてもらって、コツコツと普段から学校ワークを使って復習を進めていきましょう。
まとめ
予習、復習は家庭学習の基本中の基本であり、結果を出すために鍵になるのは「学校ワーク」です。
予習、復習ともに「コツコツ」が非常に大切になるので、家庭学習習慣を粘り強く身につけていきましょう。