塾と家庭教師は教育サービスの中でも常に比較されてきました。どちらも「授業を受ける」点は同じであるように共通点は多いですが、一方で異なる点も存在します。
しかし、一般の方々からすると、共通点と相違点がイマイチ理解しにくいですよね。
そこでこの記事では、塾講師と家庭教師のどちらも講師経験のある私が、「塾と家庭教師の違い」について、4つの観点に注目して比較していきます。塾と家庭教師、どちらを利用すべきか迷っている方は必見ですよ!
現役のオンライン家庭教師として毎日、世界中の子どもたちに勉強を教えています。現役講師だからこそ伝えられる、正確な情報をわかりやすくお伝えします!
塾と家庭教師は似ているようでこんなにも違う
では早速、塾と家庭教師の違いについて見ていきましょう。
今回、比較する項目は以下の4つです。
- 授業方法
- 使用教材・テキスト
- 指導方法
- 値段・料金
どれも教育サービスとして欠かせない項目なので、順番に解説していきます。
授業方法
まずは授業方法から取り上げますが、こちらはかなりわかりやすいと思います。
簡潔に言えば、塾は集団や複数で、家庭教師はマンツーマンです。この違いは極めて重要なので、以下で詳しく見ていきましょう。
塾は複数が基本。「個別指導」はマンツーマンではない
まず塾の指導方法からですが、塾によって指導方法は異なるため一概にまとめることはできません。
しかし、大まかに分けて以下の3つの指導方法が存在します。それぞれのメリット、デメリットもあわせてご覧ください。
塾の3つの指導方法 | |
---|---|
集団授業 1対複数 |
〇:料金が安い △:指導の質が低い場合も |
個別指導 1対2〜4 |
〇:個別に指導を受けられる △:マンツーマンではない |
マンツーマン 1対1 |
〇:質の高い指導が受けられる △:料金が高い |
ご覧のように、同じ塾でも授業方法だけでこんなにも違いが生まれます。
中でも多くの方が利用しているのが「個別指導」ですが、私も過去に某大手チェーン個別指導塾で働いていた経験があります。
その塾は1対2〜1対3で授業を行い、授業時間は90分です。したがって、実質的に生徒が講師の指導を受けられるのは、2人の場合は45分、3人の場合は30分。
しかも、講師は授業中に1人の生徒に集中するわけにはいかないため、非常に気が散りますし、疲れます。指導の質は当然落ちるため、「個別指導」と言えば聞こえは良いですが、講師目線の実態は大きく異なるのが本音です。
したがって、個別指導の4文字に踊らされず、一度見学や無料体験で授業の様子を把握することをおすすめします。
家庭教師のマンツーマン授業は魅力に溢れる
続いて家庭教師の授業方法ですが、こちらは非常にシンプルで「マンツーマンオンリー」です。わかりやすくていいですね!
マンツーマン指導のメリットを以下にまとめてみました。
- 授業時間全てを指導に当てられる
- 癖やケアレスミスを指導できる
- 表情や声音で色々なことを読み取れる
ご覧のように、「きめ細やかな指導」こそがマンツーマン授業の真骨頂ですが、どれも当然と言えば当然のことです。しかし、この当然のことが塾ではなかなか難しいため、家庭教師のマンツーマン授業には大きな価値があります。
使用教材・テキスト
続いて、使用教材やテキストについて見ていきましょう。
「どんな教材を使うのか」で分かりやすさや家庭学習のしやすさが大きく異なるため、欠かさずにチェックしておきたいポイントです。
塾は教材指定がほとんど。縛りがあるのがネック
塾によって大きく異なりますが、大手の学習塾では自社教材の購入、使用が前提です。生徒1人、各教科で確実に1冊の教材がさばけるので、塾にとって自社教材を購入させることは大きな利益につながります。
教材指定のメリットとデメリットを以下にまとめました。
塾教材のまとめ | |
---|---|
メリット |
・指導をマニュアル化しやすい ・自分で選ばなくて済む |
デメリット |
・適した教材を自由に使えない ・成績が上がりにくい |
教材指定の塾で働いていた経験に基づくと、教材を指定するメリットは生徒側にはほとんどありません。唯一、運営目線で「指導をマニュアル化しやすい」点は確かにありました。
生徒全員が同じ教材を使っているので、講師同士で連携が取りやすく、また使っているうちに「どこにどんな問題があるのか」を覚えてくるので、そういう意味での指導のしやすさはありましたね。
しかし、個人的にはデメリットの方が大きいように感じます。「この子にはあの教材の方が合ってるのに」と思っても、運営側を納得させられるような理由がなければ、指定教材以外を使うことは難しいからです。
結果的に「成績が上がりにくい」「理想の指導がしにくい」ことにつながるため、塾の存在意義である「成績向上」の妨げになり、本末転倒だと言わざるを得ません。
家庭教師は教材自由!理想の授業を追求可能
続いて家庭教師の教材ですが、こちらは自由です。一切縛りなく、生徒、保護者、講師がそれぞれ自由に、どんな教材を使って、どのように指導していくのかを決められます。
メリットとデメリットをまとめてみました。
家庭教師の教材のまとめ | |
---|---|
メリット |
・適した教材を使える ・成績が上がりやすい ・コスパが良い |
デメリット |
・選ぶのが難しい ・講師分の購入が必要なことも |
言うまでもなく、「成績が上がりやすい」のは自由に選べる家庭教師の方です。生徒のレベルだけでなく、性格や学習頻度などなど、色々なことを考慮した上で「オーダーメイド」で教材を決められるのは、塾には絶対に真似できないメリットでしょう。
デメリットとしては、「選ぶのが難しい」点もあるにはあるものの、これは講師が解決してくれます。教材の決定を任せてくるような講師とは契約するべきではありません。
一方で、講師がケチだと「自分はこの教材を持っていないので、私の分も購入お願いします」と頼まれることもあるかもしれません。特にオンライン授業の場合、お互いが所有していない状態で中身を共有してしまうと、著作権に触れる可能性があります。
この点はデメリットと言えばデメリットですが、多くの講師は自腹を切ってくれるでしょう。もし必要になっても数千円で解決できるので、そこまで気にするものではありません。
指導方法
続いて取り上げるのは「指導方法」です。授業方法は「授業のやり方」ですが、指導方法は「どんな風に成績を上げるか」といったイメージです。
ここも塾と家庭教師で大きく異なるので、それぞれ見ていきましょう。
塾によって指導方法が全然違う。学生講師は人件費の削減に…
塾の指導方法は、講師ではなく塾に決定権があります。講師が「こんな指導をしたい」と思っていても、塾のコンセプトから外れることをすると大きな問題となるため、教材と同じくこちらも縛りがキツイです。
メリットとデメリットを以下にまとめてみました。
塾の指導方法のまとめ | |
---|---|
メリット |
・マニュアル化しやすい ・講師の負担が少ない |
デメリット |
・適した指導を受けにくい ・成績が上がりにくい |
メリットとデメリットはほとんど同じで、指導方法を塾で統一することで「運営のしやすさ」があります。特に、大学生を講師として雇っている塾にとっては、指導方法を統一しマニュアル化することで、上手に人件費を削減することができています。
当然、適した指導を受けにくいため、「成績が上がりにくい」点はデメリットとして考慮しておく必要があるでしょう。
家庭教師は自由!講師の力量に依存する欠点も…
一方で、家庭教師は塾とは異なり、指導方法に縛りはほとんどありません。
講師が自由に指導方法を立案できますし、生徒、保護者からの提案ももちろん可能。
メリットとデメリットを以下にまとめました。
家庭教師の指導方法のまとめ | |
---|---|
メリット |
・適した指導を受けられる ・成績が上がりやすい |
デメリット |
・講師に負担がかかる ・講師の力量に依存する |
メリットとデメリットに共通しているのは、「講師に依存する」点です。
塾のマニュアル化された指導方法なら、講師の力量に関係なく、一定水準の指導が可能ですが、家庭教師は良くも悪くも講師の力量に委ねてしまうため、アタリを引けば飛躍的に成績が向上するものの、ハズレを引くと悲惨なことになる可能性もあります。
したがって、どちらが良いのか一概には言えませんが、理想は「良い家庭教師と巡り合うこと」だと言えるでしょう。
値段・料金
続いて、塾と家庭教師の値段と料金について解説していきます。
かなりコントラストがはっきりしている比較項目であり、気になる方も多いと思うので、詳しく取り上げます。
塾
まずは塾の値段、料金についてですが、「家庭教師よりも安い」というのが一般論です。以下に、大手学習塾の料金をまとめてみました。
塾の料金相場 | |
---|---|
ITTO |
・1対1:18,100円(80分) ・1対3:12,500円(80分) |
明光義塾 | ・1対3:14,300円(90分) |
早稲田アカデミー |
・集団3科目:21,560円 ・集団5科目:27,720円 |
参考:料金 – ITTO
参考:料金 – 明光義塾
結論から言うと、1対1〜1対3の個別指導の場合、週1回、1科目の授業で「15,000円前後」が相場です。
そして集団授業については、塾により大きく異なります。
「早稲田アカデミー」は個別指導塾とは少し異なりハイレベル向けの学習塾で、偏差値60以上の子がさらに上を伸ばすために利用するようなイメージです。
料金は集団授業、3科目と5科目で20,000円を超えてきます。
1科目換算にすると、個別指導のITTO、明光義塾よりもかなり安いため、「集団授業と個別授業で大きく異なる」と言えるでしょう。
家庭教師
続いて家庭教師の料金相場ですが、以下に大手家庭教師サービスの料金をまとめてみました。
家庭教師のトライ |
・最安:12,000円(60分) ・最高:20,000円(60分) |
---|---|
家庭教師のあすなろ | ・固定:8,000円(60分) |
家庭教師のノーバス | ・固定:24,200円(90分) |
家庭教師の場合、利用するサービスや先生によって大きく料金が異なるため、一概に相場を決めることは難しいです。
とはいえ、業界最大手の家庭教師のトライでは、最安でも60分で12,000円、最高で20,000円となっており、学習塾の80分〜90分の授業の相場が15,000円前後打と考えると、割高だと言えるでしょう。
一方で、「家庭教師のあすなろ」の場合は、先生に関わらず、料金は60分で8,000円と固定。90分換算でも12,000円と、学習塾に通うよりも安くマンツーマン指導の家庭教師を利用できます。
コスパは「講師を独占できる時間で考える」べき
このように、両者の料金を比べると、利用するサービスや先生によって異なるものの、「家庭教師の方が割高」だと結論できます。
しかし、両者をコストパフォーマンスという観点で比べると、違った感想を抱くかもしれません。
ここでは「講師を独占できる時間」で考えてみましょう。先ほども取り上げた「明光義塾」は、先生対生徒が1対3の授業を90分で14,300円でした。しかし、単純計算すると、講師を独占できる時間は1授業当たり、90を3で割った30分です。
したがって、「講師を独占できる時間が月に120分で14,300円」というのが、「講師を独占できる時間」で見た時の個別指導塾の料金になります。
一方で、家庭教師の場合は言うまでもなく、先生を独占できる時間は授業全体です。したがって、家庭教師のトライでは、「講師を独占できる時間が月に240分で20,000円」で利用できると考えられます。
また、家庭教師のあすなろについては、「講師を独占できる時間が月に240分で8,000円」という破格すぎる料金設定となっており、学習塾よりも「コスパは圧倒的に良い」と言えます。
もちろん、教育サービスを「講師を独占できる時間」だけで評価することが正しいわけではないため、上記はあくまで参考程度のお話です。
しかし、授業料とは「教育サービスを受けるために支払っている」ものであり、その教育サービスとは「講師に指導をしてもらう」ことであるはず。
ゆえに、塾や家庭教師を「講師を独占できる時間」で評価することが、あながち的外れでないことは理解できると思います。
- 授業方法は家庭教師のマンツーマン指導が理想的
- 使用教材は縛りがない家庭教師が理想的
- 指導方法はどちらも一長一短。良い講師に巡り合おう
- 金額そのものは塾が安い。コスパは家庭教師の方が優れる
結局、塾と家庭教師どっちがおすすめ?
塾と家庭教師の違いについて比較を行ってきましたが、結局、どちらがおすすめなのでしょうか?
どちらにもメリットとデメリットがあり一概には言えないため、それぞれをおすすめできる人について以下で解説していきます。
塾がおすすめのケース
まずはじめに、塾をおすすめできる人について解説していきます。まとめると以下の通りです。
- 近くに信頼できる塾がある人
- 近くにハイレベルな大学がある人
- 2万円以内に抑えたい人
先述のように、塾は授業方法、使用教材、指導方法のいずれにおいても、基本的に家庭教師よりも質は劣ります。したがって、塾を選ぶ場合は「質の保証」がある程度必要です。
そして、塾の質を決めるのは「口コミ」「講師」の2つです。近所に口コミで話題の塾があったり、ハイレベルな大学の講師が働いている塾があれば、利用してみる価値は大いにあるでしょう。
また、塾は家庭教師よりもコスパに優れているので、予算に限りがある人にもおすすめです。
家庭教師がおすすめのケース
続いて、家庭教師をおすすめできる人についてですが、まとめると以下のようになります。
- 質にこだわりたい
- 授業方法や教材に縛られたくない
- マンツーマンでないと難しそう
家庭教師はあらゆる点で塾よりも優れているため、「授業や指導の質」にこだわりたいなら強くおすすめできます。講師1人に対して複数人の指導を前提とする塾には決して真似することのできない、マンツーマン指導の強みを存分に活かしていきましょう。
また、子によっては「マンツーマンでないと難しい」ケースもあるでしょう。集中力がなかったり、学力が低かったり、感情の抑制が上手でなかったり、といったものがあげられます。
こういった場合でも、家庭教師のマンツーマン指導なら柔軟に対応できますし、「指導が難しい子を専門とする講師」も少なくありません。
心理系の資格を有していたり、子ども支援の現場で活躍していたりと、講師の多様性に溢れるのもまた家庭教師の魅力なので、理想の先生にできるだけ早く巡り合えるよう、利用の開始を検討しましょう。
まとめ
塾と家庭教師は、似ているようで大きく異なります。
どちらにもメリットとデメリットがあるため、一概にどちらが良いとは言えません。
子どもや家庭の環境、教育に投資できるお金など、総合的に踏まえた上で、より優れた選択肢を選べるよう、記事を参考に検討をしてみてください。